http://www.sankei.com/economy/news/170317/ecn1703170029-n1.html

東芝の経営再建が新たな局面を迎えている。分社、売却する半導体事業について、政府は日本政策投資銀行や米国のファンドなどが組んで買収する構想を模索し始めたほか、東芝が検討する米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の法的整理をめぐっても日米両政府の調整が進められる見通しだ。だが、政治色が強まり過ぎると東芝の選択肢が狭まり、再建の足かせになる懸念もある。

 「全部他人頼み。東芝が主体的に決定できることがない」。東芝幹部はこうぼやく。

 東芝は米原発事業の巨額損失で負債が資産を上回る「債務超過」に陥っており、稼ぎ頭の半導体事業を売却して財務を改善する方針だ。また、今後の損失発生リスクを遮断するため、WHの株式過半を売却する方針も打ち出した。WHに連邦破産法11条の適用を申請し、債務などを整理した上で買い手を探すのが現実的とみられる。

 一方、半導体の売却先をめぐっては、今月末に締め切られる入札に向け、資金力の豊富な台湾の鴻海(ほんはい)精密工業が、台湾や韓国の企業に共同買収を打診するなど意欲的に動いている。だが「鴻海は中国政府と近すぎるので難しい」(関係者)との指摘がある。政府は最先端の半導体技術が中国に流出し、国の安全保障上の懸念が生じることを警戒しているからだ。


さらに、ここにきて政府内で政投銀と産業革新機構、米国の投資ファンドが組んで買収する構想が急浮上している。競争力の高い事業に日本が関与し続けるのが狙いだが、一方で米政府の意向への配慮もある。

 東芝と米半導体大手ウエスタンデジタル(WD)は半導体の共同生産で提携しており、東芝の半導体事業が競合他社に奪われることはWDにとって死活問題。「米政府から日米企業の連合に売るのが望ましいとの声が出ていた」(東芝幹部)という。

 ただ、売却先を選ぶ際に価格よりも政治判断が重視され過ぎれば、再建シナリオに狂いが生じる恐れもある。(万福博之)